教科の学びでのポイント
単元の目標
実験を通して、重い物を楽に持ち上げる方法やてこがつりあう時の規則性についての考えをもつことができる。また身の回りの様々な道具でてこの規則性が利用されていることに気付く。
プログラミング的思考とのつながり
国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2015)によれば、「理科を勉強すると、日常生活に役立つ」と答える日本の子どもは62%で年々増加傾向にあるものの、国際平均の85%からは大きくかけ離れているのが実情である。こういった課題を受けて、新学習指導要領では小学校理科の改訂の要点として、「理科を学ぶことの意義や有用性の実感及び理科への関心を高める観点から、日常生活や社会との関連を重視する」(小学校学習指導要領解説 理科編より)との方針が示された。
本時では、てこの規則性が利用されている機械としてクレーンを取り上げている。釘抜きやはさみなどの道具に比べ、クレーンのような機械はさまざまな要素が組み合わせられてその働きが実現されている。クレーンの模型を自分の思ったとおりに動かすためには、てこの規則性を使うだけではなく、持ち上げる物の重さなどの条件に応じて手順などを変える必要がある。そこにプログラミング的思考を働かせ、学習したことを実際の機械に適用して問題解決につなげていくのである。
評価規準
関心・意欲・態度 | 科学的な思考・表現 | 技能 | 知識・理解 |
てこに興味をもち、てこのはたらきを進んで調べようとする。 | てこのはたらきやしくみを計画的に追究し、てこを傾けるはたらきやてこがつりあうときの規則性についての見方や考え方をもつことができる。 | てこを使い、力の大きさやはたらきを調べることができる。 | てこがつり合うときの規則性がわかり、身の回りの道具にもてこの原理を用いたものがあることがわかる。 |
単元について
本単元では、生活に見られるてこについて興味・関心をもって追究する活動を通して、てこの規則性について推論する能力を育てるとともに、それらについての理解を図り、てこの規則性についての見方や考え方をもつことができるようにすることをねらいとする。
てこには支点、力点、作用点の3つの要素があり、ここではそれらの関係性を見ていく。てこの学習では実際に自分の力でおもりを持ち上げる活動を通して手応えを感じることで、それぞれの関係性が体感できるという利点がある。また、実験用てこを使って3つの要素の関係性を見るためには、支点、力点、作用点を1つだけ変えるという条件制御について考えていく必要性があるため、5年生で重点的に育む条件制御の考えを学習を生かすことができる。さらに実験用てこのおもりの位置と支点からの距離の関係性について推論し、実験を通して規則性を発見することができる。
また、発見した規則性が身近な道具や機械にどう活かされているのかを調べ、具体的な活動を通して確認していくことでその有用性にも気付かせていきたい。
学習指導計画(全9時間)
次 | 時 | 学習活動 | 留意点・評価 |
Ⅰ | 1 | てこを使って重い物を楽に持ち上げる方法を計画し、実験を行う。 | ◯三点の内、変える条件を1つにすることに注意させる。
☆三点に着目しながら、実験を行い、結果を対比させながらまとめている。 |
2
3 |
力の三点の位置関係について理解する | ◯支点から力点・作用点それぞれの距離に着目させる。
☆三点の距離の関係を理解している。 |
|
Ⅱ | 4 | おもりの重さと位置関係を変えながら「てこの規則性」を調べる実験を行い、記録にまとめる。 | ◯てこの片方は固定して実験を行うことをおさえる。
☆てこがつり合うときのおもりの重さと支点からの距離を調べ、結果を正確に記録している。 |
5 | てこがつり合うときの規則性に気付く。 | ◯言葉の式や反比例を使って表現できるように助言する。
☆おもりの重さと支点からの距離の関係性について、様々な視点で理解している。 |
|
Ⅲ | 6 | 身の回りの道具で「てこの原理」が利用されているものを探す。 | ◯支点が中にあるものだけではないことに注意させる。
☆身の回りのもので「てこの原理」が使われているものがあるか、調べようとしている。 |
7 | 三点の位置関係の違いによる道具の分類をする。 | ◯力点や作用点にかかる力の大きさに着目させる。
☆てこの原理を利用した道具のしくみを理解している。 |
|
Ⅳ | 8
9 本時 |
機械(クレーン車)にも「てこの原理」が利用されていることを知り、ロボットを用いて物を持ち上げる実践を行う。(Artec Robo) | ◯てこの原理を元に、クレーン車で重い物を持ち上げる際の工夫することを検討させる。
☆てこの原理を活用し、重いものを持ちあげる方法を考えることができる。 |
本時について
1.目標 てこの原理を活用し、ものを持ち上げるための工夫を考えることができる。
2.展開
分 | 学習活動 | ◯指導上の留意点 ☆評価 | |
0
8
15
25
75
85 |
■既習事項を想起する
・機械にも「てこの原理」が使われていること、クレーン車の支点(真ん中)がどこにあるかを確認する。 ■課題をつかむ
■活動内容とロボットの説明を聞く。 ・グループで1台のロボットが利用可能 ・機械(ロボット)とプログラムを作成する。 ・繰り返し実践し、課題解決を行う。 ■クレーン車及びプログラムの作成をグループで話し合いながら行う。 ・〈問題1〉風船をその場で持ち上げる ・〈問題2〉おもり(中)のついた風船を移動させる ・〈問題3〉おもり(大)のついた風船を移動させる ・〈問題4〉風船を移動させる ・〈問題5〉自由課題(おもりを重くする)
■作品を交流する ・実演を交えながら、グループで作成したクレーン車を発表する。 ■ふり返りをする |
◯映像資料(NHK for School)を通して、機械にも「てこの原理」が使われていることを確認させ、本時の活動の見通しをもたせる。
◯使用する教材のクレーン車を見せることで、活動への意欲を高める。
◯教師機で例を示しながら、プログラムの作成方法やロボットについての説明を行い、見通しをもたせる。 ◯それぞれの課題を通して、図や言葉を使って工夫した点をワークシートに記入させる。 ◯繰り返しシミュレーションを行い、改善を行うようにさせる。 ☆てこの原理を利用しながら、安全な救助の方法を考えることができる。
◯グループ内を2班(説明する・聞く)に分け、交流を行わせる。 ◯理科の学びを深めている姿、プログラミング的思考を働かせている姿をそれぞれ見取り、全体で共有する。 |
3.評価 てこの規則性をプログラミングによって問題解決に活かす方法を工夫することができたか。
準備環境
使用したプログラミング言語や実行環境
教室の設備
振り返り
栃木県大田原市立大田原小学校 教諭 薄井健太 電気の単元以外で新しい『理科✕フィジカルコンピューティング』の授業ができないか模索しました。その時、目に留まったのが「てこのはたらき」に掲載されていたクレーン車でした。クレーン車を使いながら課題に対してトライ&エラーを繰り返すことで、学びを生かして表現する力が育むのではないかと考えました。 子どもたちはプログラミングの操作に慣れていたので、活動時間のほとんどを「これまでの学びを生かしてクレーン車の形状をどう変化させるか」に費やすことができました。活動を行うと、教師側が予想していなかった考えがたくさん出てきました。特に「支点と作用点の距離を短くする」方法でも違った方法を見い出したり、実際のクレーン車に使われているアウトトリガーを作成したりと、子どもたちの自由な発想に大変驚かされました。また班内だけでなく、他の班との交流やロボットの動きを見て考えを広げていました。 授業の振り返りでは、「てこのはたらきが機械にも生かされていることを分かった」と記述し、学びと実生活との関連を表現していました。 (特非)みんなのコード 主任講師 福田晴一
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