教科の内容にあったプログラミング教材で、倍数の理解を深める

教科の学びでのポイント

  • 倍数をプログラミングで表現しようとすると、「◯で割ったあまり」を考える必要があり、そのことから倍数の性質を児童に考えさせることができます。
  • 中盤以降では、倍数や倍数でない数が画面に表示されることで倍数の規則性に気づくきっかけになります。

単元の目標

整数の性質についての理解を深める。
・整数は、観点を決めると偶数、奇数に類別されることを理解する。
・約数、倍数について理解する。

プログラミング的思考とのつながり

2016年12月に次期学習指導要領についての答申が出され、2020年から小学校の教育課程にプログラミング教育が組み込まれることになりました。「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)」では、「各教科等で育まれる思考力を基盤としながら基礎的な『プログラミング思考』を身に付けること」を目指すとしています。プログラミングのみを取り立てて扱うのではなく、各教科等の内容と関連付けて指導することが求められています。

「プログラミング的思考」について、前述の「取りまとめ」では「自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく」ことだと述べています。一方、算数科における「数学的な考え方」については、評価の観点の趣旨として「日常の事象を数理的にとらえ、見通しをもち筋道立てて考え表現したり、そのことから考えを深めたりする」という記述があります。この実践では、プログラミングを通して算数科における内容の理解を深めるための活動を提案しています。

前述の「取りまとめ」の中に指導内容のイメージが示されていたり、文部科学省のWebサイトにある「プログラミング教育実践ガイド」の中に実践事例が示されたりしているが、まだまだ実際に行われたという例は少ないようです。この事例が、小学校におけるプログラミング教育と教科の学習とを関連付けた指導のご参考になれば幸いです。

単元について

この単元では、倍数や約数などの意味を知らせた上で、ある数の倍数の全体や約数の全体をそれぞれ1つの集合としてとらえられるようにするとともに、整数をある観点を定めていくつかの集合に類別できることを指導のねらいにしています。

4年までに、整数を億、兆の位まで拡張し、十進法としての理解を完成しています。数概念も、ある数を2つの数の和や差、あるいは積や商として見たりするなど、次第に深められています。また、資料の整理のしかたを通して、ある観点を決めて分類することのよさも理解しています。

この数の合成・分解、分類整理の学習の発展として、倍数・約数をとらえ、さらに、集合の考えを用いて公倍数・公約数の意味とその求め方についてできるだけ具体的な活動を通して考えさせていきたいと思います。

学習指導計画(全11時間)

学習活動 評価
倍数の意味を理解し、求める。

倍数は限りなくあることに気付く。

倍数の意味を理解している。
公倍数、最小公倍数の意味と見つけ方を理解する。 公倍数、最小公倍数の意味を理解している。

プログラムづくりを通して公倍数、最小公倍数の求め方を考える。 整数を倍数の観点から分類して考えている。

公倍数、最小公倍数の意味と求め方を理解している。

最小公倍数を活用する具体的な場面を考え、公倍数あるいは最小公倍数についての理解を深める。 最小公倍数の考え方を、具体的な場面で活用している。倍数や最小公倍数を求めることができる。
約数の意味を理解し、求める。 約数の意味と求め方を理解している。
公約数、最大公約数の意味と求め方を理解する。 整数を約数の観点から分類して考えている。公約数、最大公約数の意味を理解している。
最大公約数を活用する具体的な場面を考え、公約数あるいは最大公約数についての理解を深める。 最大公約数の考え方を、具体的な場面で活用している。約数や最大公約数を求めることができる。
倍数と約数の関係を理解する。素数について調べる。 倍数と約数の関係を理解している。素数について理解している。
偶数と奇数の意味や性質を理解する。 整数は偶数と奇数に類別できることを理解している。
10 既習事項の理解を深める。
11 既習事項の確かめをする。

本時について

学習活動 ◯指導上の留意点 ☆評価
0

 

 

 

 

 

5

 

 

 

 

 

 

 

10

 

 

 

 

 

 

 

40

■既習事項の確認をする

・倍数や公倍数について学習したことを想起する。

■課題をつかむ

ロボットに公倍数を言わせるプログラムをつくって、公倍数の求め方を考えよう。

■プログルの基本的な使い方を知る。

・ブロックのつなげ方、外し方、消し方、実行やリセットのしかたを知る。

■プログルの各ステージに取り組む。

・3の倍数かどうかを判別するには、3でわったときの余りが0になればよいことに気付く。

・思い通りの動きにならない場合、違うブロックを使ったり順序を変えたりするなど、どこを変えればよいか考える。

■ふり返りをする

「今日の授業で感じたことや考えたこと、もっとやってみたいことを書きましょう。」

書いたことをもとに話し合い、見つけたきまりについてまとめる。

 

◯2つの倍数の共通な数を公倍数といい、その中で一番小さい数を最小公倍数ということを確認する。

 

 

 

◯ステージ3ないし4まで教師の演示を見せ、基本的な使い方を確認する。

 

 

 

 

 

 

◯できるだけ自力で解決するようにさせる。

 

 

 

◯極端に遅れてしまう児童がいないようグループごとに教え合うようにさせる。

◯同じところでつまずいている児童が多い場合は、適宜全体指導の時間をとる。

 

 

◯ワークシートに記入させる。

☆プログラムづくりを通して公倍数の求め方について考えることができたか。(観察・成果物)

本事例は以下の書籍を参考にさせていただきました。感謝申し上げます。
「小学生からはじめるわくわくプログラミング」阿部和広(2013) 日経BP社

準備環境

使用したプログラミング言語や実行環境

  • 教材名:プログル(公倍数コース)
  • 教材の特徴:ログイン不要、パソコン教室で使える

教室の設備

  • 実施場所:狛江市立狛江第五小学校
  • ICT環境:タブレットが学校全体に40台ある
  • 児童1人1台のタブレット

下記環境下でも実践可能

  • インターネットにつながるパソコン教室

※ブラウザのバージョンが古いと、うまく動作しない場合があります。

振り返り

児童

「遊びやゲームなどに見えるけれど、やってみたら勉強ににているのでとても良いと思った。」

「ノートに書くよりも分かりやすかったし、楽しくできたのですごくよいと思いました。 また今度やってみたいと思いました。」

「コンピューターを使って勉強したらおもしろいし、楽しいし、しかも勉強もできた。 私でも楽しく勉強できた。すごいと思った。」

「倍数は3は3個ずつ増えていくことがわかった。5も同じようなことだとわかった。」

「3の倍数を書くとき、3から書くのか6から書くのか 少し不安だったから、改めてちゃんと分かった。」

 

公倍数を探すときに、教科書では子どもたちを2チームに分け、一方は3の倍数、もう一方は5の倍数のときに拍手をするというゲームを通して体感的に公倍数があることに気付かせています。具体的に理解させるためによい方法ですが、倍数のもつ規則性や、3と5の公倍数が3の倍数の集合と5の倍数の集合の重なりであるということには意識が向きにくいです。倍数をロボットに言わせるプログラムを考えて実行すると、画面上に規則的に数字や言葉が並んでいきます。視覚的に規則性をつかみやすくなります。これはノートやワークシートに書かせても気付かせることはできますが、中には数字などをきちんとそろえて書くことが苦手な子もいます。「ノートに書くよりも分かりやすかった」という感想はそのような学習面での課題をもっている子のものです。特別支援の観点からも今回のような授業が有効であることが分かりました。ただ、倍数を考えるところまではほとんどの児童がたどり着きますが、公倍数になると一段と難しくなるので自力では解決できない児童が多くなります。そこに対応する手だてをあらかじめ考えておくことが必要だと思います

(特非)みんなのコード 主任講師 竹谷正明

 

(特非)みんなのコード 代表理事 利根川裕太

プログルでプログラムを組むと条件分岐の中に条件分岐が入る、いわゆる入れ子構造になっていることがブロックによって視覚的につかみやすくなります。ただ、この構造に至るのはなかなか難しいので、グループで話し合って考えるようにするなど学び合う活動を取り入れないと理解の差が大きくなってしなうおそれがあります。ふだんから子どもたちが協働的な学びに向かう姿勢を身に付けていることはプログラミング教育の効果を高める上でも必要だと言えます。